認知症の親と同居する日々は、予測不能な出来事と大きな精神的負担の連続です。
先日も買い物から帰宅せずに徘徊し、結果3回目の警察にお世話になったできごとがありました。
母の徘徊したときのお話し
その中で、将来の自分に対する不安が膨らむのは自然なことかもしれません。
この先、自分はどうなるのだろう
親が認知症になったように、自分も同じ道をたどるのではないか
などと、そんな思いが頭をよぎることが多々あります。
などと思いながら、母を見つめる私なのでした。
しかし、この経験は同時に、終活の大切さを教えてくれるきっかけにもなっています。
本記事では、認知症介護の現場から見えてくる終活の意義と具体的な取り組みについて、詳しくご紹介します。
認知症の親と暮らす中で抱く不安と課題
日々の生活で直面する現実
認知症の親との生活には、次のような不安や課題があります。
- 介護の負担:
日々の見守りやサポートが必要で、身体的にも精神的にも疲労が蓄積する - 経済的な問題:
介護費用や医療費、施設利用料などの金銭的負担が大きい - 将来への不安:
自分が親と同じように認知症になる可能性を考えると、不安に押しつぶされそうになる
以下の表は、認知症介護を経験している人が感じる主な不安要素を整理したものです。
不安要素 | 主な内容 | 影響 |
---|---|---|
身体的負担 | 睡眠不足、食事の準備、外出時の見守りなど | 体力の低下、健康悪化 |
精神的負担 | 認知症の症状によるストレス(徘徊、暴言など) | 鬱症状、不安障害 |
経済的負担 | 医療費、介護用品費用、施設入居費 | 貯蓄の減少、老後資金不足 |
将来への不安 | 自分が認知症になった場合の生活や介護体制の不備 | 終末期の準備不足 |
認知症介護の心理的な影響
認知症の親と向き合う中で、多くの人が心の負担を抱えます。
特に、親が「昔の自分」とは異なる振る舞いをする姿を見ると、情とストレスの間で揺れ動くことがあります。
やたらと頑固になったり、出来ることなのにめんどくさがって放置したり(お風呂や洗濯)。
優し〜く言っても何度も言ってもムダ・・
その割には、巧妙なウソをつくのです。
例えばですが、牛乳を飲んだコップにそのまま水が入ってたので、中の水が濁ってました。
お母さん、このコップの中身って何?
お米のとぎ汁を入れてあるのよ
って・・一緒に暮らしてからお米研いだことないのに、即座にこの返答。
なので、介護者の精神的な健康が削られていくのをヒシヒシ感じています。
解決策としての支援ネットワーク
地域の介護支援センターやケアマネージャーを活用することで、介護の負担を分散することができます。
また、同じ立場の人々と交流することで、孤立感を和らげることも可能です。
さらに、オンラインでの介護コミュニティに参加することも、孤独を感じる介護者にとって有効な方法です。
他の介護者の体験談やアドバイスは、日々の生活に役立つだけでなく、心の支えにもなります。
誰かに話すことで、私もずいぶんと気持ちを落ち着けられています。
デイサービスの送迎の際に、担当の方とちょっとお話しするだけでも気持ちがラクになるのです。
終活を考える動機
認知症介護の経験から、終活を考える理由は主に次の3つに集約されます。
自分自身の将来への備え
認知症は誰にでも起こりうる現実です。
親の介護を通じて、認知症が自分の将来にも関わる可能性を強く意識するようになります。
- 認知症になった場合、家族に迷惑をかけないために何を準備すべきかを考える
- 財産管理や医療方針について、自分の意思を事前に明確にしておく必要性を痛感する
家族への負担軽減
親の介護を通じて、家族への負担がどれほど大きいかを実感する中で、自分の老後には同じような負担をかけたくないという思いが芽生えます。
- エンディングノートやリビングウィルで自分の意思を残し、家族が迷わないようにする
- 医療や介護の選択肢を事前に家族と共有し、いざというときの判断をスムーズにする
財産や医療の意思決定
親の介護で財産管理や医療方針の決定に苦労する経験から、自分の老後には同じ問題を避けるための準備をしたいと考えます。
- 任意後見制度や家族信託を活用して財産管理の仕組みを整える
- 延命治療や介護方針に関する自分の考えを事前に文書化しておく
以下の表は、認知症介護が終活を考えるきっかけとなる具体的な場面を整理したものです。
きっかけとなる経験 | 関連する終活の内容 |
---|---|
財産管理の困難 | 任意後見契約、家族信託、エンディングノート作成 |
医療・介護の選択の難しさ | リビングウィル、ACP(アドバンスケアプランニング) |
親の介護で家族が迷う場面 | 遺言書作成、事前の家族との話し合い |
親の経験から学ぶ教訓
親が終末期を迎える際に、「もっと早く準備をしておけばよかった」と感じることが多いのは事実です。
この教訓を自分の人生に活かし、早めに終活を始めることの意義を再認識しましょう。
終活の具体的な取り組み
終活は、自分の人生を見つめ直し、未来に備えるための重要なプロセスです。
以下に、具体的なステップを紹介します。
エンディングノートの作成
エンディングノートは、自分の希望や情報を家族に伝えるためのツールです。
以下の項目を含めると良いでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
基本情報 | 氏名、生年月日、家族構成、連絡先 |
財産情報 | 銀行口座、不動産、保険、株式など |
医療・介護 | 希望する医療措置、延命治療の可否、介護施設の希望 |
葬儀・埋葬 | 葬儀の形式、希望する宗教、埋葬方法 |
メッセージ | 家族や友人への感謝の言葉 |
生前整理
物理的な整理を行うことで、生活の質を向上させるとともに、家族への負担を軽減します。
- 物の整理
不要な物を処分し、必要な物だけを残す - デジタル遺産の管理
メールやSNSアカウントの情報を整理しておく - 記録の保存
家族に伝えたい思い出や大切な写真をまとめ、アルバムやデジタルフォトフレームに保存
財産管理の準備
財産を適切に管理するための仕組みを整えます。
- 任意後見契約
自分が判断能力を失った場合に備え、信頼できる後見人を指定 - 家族信託
財産を信頼できる家族に託し、柔軟な運用を可能
医療・介護の意思表示
個人的にこの項目が一番考えなくてはならないと思っています
- リビングウィルとは?
-
重い病気にかかり、自分の意思を伝えられなくなったときに、「どうしてほしいのか」を、あなたに代わって、家族やあなたの親しい人々、医療者に伝えるための手紙
- ACP(アドバンスケアプランニング)とは?
-
将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのこと
医療の場合
- 延命治療の希望
-
人工呼吸器、心肺蘇生、人工栄養(胃ろうや点滴)などの延命措置を希望するかどうか
- 緩和ケアの優先度
-
痛みや苦痛を和らげるケアを最優先にしたいか、積極的な治療を続けたいか
- 特定の医療行為の拒否
-
透析や輸血など、特定の医療行為を希望しない場合
- 治療場所の希望
-
自宅、病院、ホスピスなど、どこで治療やケアを受けたいか
- 宗教や文化的価値観
-
治療やケアにおいて尊重してほしい信念や価値観
- 代理決定者の指名
-
自分の意思が伝えられない場合に代わりに判断を下してくれる信頼できる人を指定
認知症介護の場合
- 進行段階に応じたケアの希望
-
認知症が軽度のうちはどのような生活を送りたいか(趣味の継続、社会参加など)
中等度以降は、どこでどのような介護を受けたいか(自宅介護、施設入所など)
終末期のケアにおいて何を優先したいか(延命治療の拒否、苦痛の緩和など)
- 延命治療に関する意思
-
認知症が進行した場合でも、人工呼吸器や胃ろうによる延命治療を希望するかどうか
心肺蘇生や輸血など、具体的な医療行為の希望や拒否
- 日常生活のサポート方法
-
食事や服薬管理、排泄などに関して、どのような方法で支援を受けたいか
外出や趣味を楽しむためのサポートをどのようにしてほしいか
- 治療やケアの場所
-
自宅での介護を希望するか、特定の施設でのケアを希望するか
どの段階で施設入所を考えるか
- 金銭管理や法的手続き
-
認知機能が低下した場合の財産管理の方法(成年後見人の指名など)
自分の生活費や医療費をどのように管理してほしいか
- 最期の迎え方
-
認知症の進行後、自分らしい最期を迎えるための具体的な希望(穏やかな環境、家族のそばなど)
葬儀や供養の形についての希望
- 家族や介護者への配慮
-
家族への負担をどう考えるか(介護を頼む範囲、外部のサービス利用など)
家族とどのようにコミュニケーションを取り続けたいか
医療・認知症の介護について
- 自分の医療やケアについての意思を事前に明確にしておくための方法
- 自分の希望が尊重され、大切な家族や医療者が迷わず行動できる
自己の人生を振り返る
終活を進める中で、自分がこれまでどのような人生を歩んできたかを振り返ることで、これからの生き方について新たな視点を得ることができます。
過去に行った旅行の記録、人生の分岐点での思い出をノートに書いたり、アルバムにまとめてみたり。
これから先はどのようなことをしてみたいかと考えるキッカケになります。
終活や相続に関する悩みを相談できます
終活がもたらす前向きな効果
終活は、単なる「最期の準備」ではなく、現在の生活をより豊かにするためのプロセスでもあります。
- 安心感の獲得
- 家族との絆の深化
- 生活の質の向上
- 自己理解の深化
- 孤立感の軽減
- 前向きな人生観の形成
詳しく説明します
安心感の獲得
自分の希望や準備が整うことで、将来への不安が軽減されます。
例えば、エンディングノートを作成しておくことで、医療や介護の選択を家族が迷わずに済むように準備できます。
この備えが心の負担を軽減し、平穏な日常を支えます。
家族との絆の深化
終活を通じて家族と話し合う機会が増え、関係がより深まります。
たとえば、親子間で医療や介護の方針について事前に共有することで、互いの気持ちを理解しやすくなり、安心感が生まれます。
家族会議を設けることが一つの具体的な方法です。
生活の質の向上
生前整理を行うことで、生活環境が整い、日常が快適になります。
たとえば、使っていない家具や不要な荷物を整理することで、居住空間が広がり、安全性が向上します。
また、思い出の品を整理する過程で、過去の自分を振り返る機会にもなります。
自己理解の深化
人生を振り返ることで、自分の価値観や希望が再確認できます。
たとえば、自分がどのような場面で幸せを感じてきたか、何を大切にしてきたかを見つめ直すことで、これからの人生における優先順位を明確にできます。
日記や回想ノートの作成がその一助となるでしょう。
孤立感の軽減
終活セミナーや地域の交流会に参加することで、新たな人間関係が築けます。
たとえば、地域の高齢者向けの活動やオンラインの終活コミュニティでは、同じ課題に向き合う仲間と出会えます。
他者との交流は孤独を和らげ、前向きな気持ちを引き出すきっかけになります。
前向きな人生観の形成
終活を通じて、「今を大切に生きる」という姿勢が自然と身につきます。
まとめ: 終活を通じて未来を明るく
認知症の親と暮らす中で、自分の将来に対する不安を抱えるのは当然のことです。
母と暮らし、私の思考が終活にたどり着いたのは・・
こうなりたくない!!
頭がボケると家族や周囲を困らせるし、子どもの時間を奪いかねない
こんな気持ちを家族に向けられたら、恐ろしくなる
こうならないためにどうしたら良いのか??
心身の健康はもちろん、頭を日常から使い好奇心を持って色んなことにチャレンジする
今までのこと、これからのこと、じっくりと考えてみよう
ではこうしよう!!!
自分の医療や介護の希望・お葬式やお墓・持っているお金のこと・思い出などを、「終活」として記録していこう
このような心境のマインドになってきたのです
老いていく不安を終活という形で行動に移すことで、少しずつ前向きな気持ちを取り戻すことができます。
終活は、将来の不安を軽減するだけでなく、現在の生活を豊かにし、家族との絆を深めるきっかけにもなります。
このブログを通じて、同じような境遇にいる方々が一歩踏み出す助けになれれば幸いです。
私たち一人ひとりが、自分らしい人生と最期を迎えるために、今できることを始めましょう。
そして、未来への準備を通じて、日々の生活が少しでも充実したものになるよう願っています。
認知症の親がいると、なぜ終活を考える必要があるのですか?
認知症介護を経験すると、自分の将来に対する不安や準備の重要性に気づくことが多いです。親の介護を通じて、認知症や老後の課題が身近なものとして感じられます。そのため、自分が同じ状況に陥ったときに家族に負担をかけないよう、今のうちに備えておくことが大切です。
終活は何から始めれば良いですか?
エンディングノートの作成が手軽でおすすめです。以下の項目から始めてみましょう。
- 自分の基本情報(氏名、生年月日、連絡先など)
- 財産情報(銀行口座、不動産、保険)
- 医療・介護の希望(延命治療の有無、介護施設の選択)
これらを整理することで、具体的な終活の方向性が見えてきます。
終活を通じて前向きな気持ちを持つにはどうすれば良いですか?
終活を単なる「準備」と捉えるのではなく、「自分を見つめ直す時間」と考えることで前向きになれます。
たとえば・・
- 目標を持つ: 整理した空間を活用して趣味を楽しむ
- 家族との時間を増やす: 話し合いの中で感謝の気持ちを伝える機会にする
- 新しい出会いを楽しむ: 終活イベントやセミナーに参加して同じ関心を持つ人と交流する
認知症介護を続けながら終活を進める方法は?
認知症介護をしながら終活を進める場合、無理のない範囲で取り組むことが大切です。
具体的には、
- 支援サービスを活用: デイサービスや訪問介護を利用して、自分の時間を確保する
- 短時間の作業を積み重ねる: 1日に15分だけエンディングノートを記入するなど、少しずつ進める
- 家族と役割を分担: 介護と終活の作業を家族と分担し、お互いをサポートする
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